新規事業開発部

三菱ガス化学は、「新規事業の創出と育成」を目的に、2015年4月1日に「新規事業開発部」を発足しました。「事業戦略グループ」「事業開発グループ」「新規事業研究センター」の3部門から成り、「事業領域選定」から「事業化構想草案の立案」「探索研究」「市場開発」「事業化」の道筋を一貫した組織で実現することを目指しています。事業化にあたっては、オープンイノベーションによる協業、ベンチャー企業への出資、またM&Aも活用していきます。

「新規事業の創出と育成」については、三菱ガス化学グループが中期経営計画で掲げる5つの事業領域をターゲットにしています。

主な成果とアクション

酸素も水蒸気も遮断できるプラスチック製
バイアル・シリンジ「OXYCAPTTM」を開発

現在、世界の注射剤のほとんどにガラス製のバイアル、シリンジが使用されています。ガラス製容器はガスバリア性に優れている一方で、割れやすい、廃棄しにくい、重い、無機物の溶出が多い、タンパク質の吸着が多いなどのデメリットも指摘されています。
三菱ガス化学は、注射剤向けとして多層構成のプラスチック容器「OXYCAPTTM」を新たに開発しました。ガラス並みのガスバリア性と高い水蒸気バリア性を持つ世界唯一のプラスチック製多層容器として、バイオ医薬品など、酸素に敏感な薬剤向けへの採用を見込んでいます。

詳細

技術名称 OXYCAPTTM(オキシキャプト)
製品形態 バイアル、シリンジ
開発目的 注射剤用ガラス容器の代替
解決課題 軽量化、ガラス破損事故の防止、無機物の溶出防止
特徴
  • 独自開発の酸素吸収樹脂を挟み込んだ3層構造によって、酸素や水蒸気を遮断
  • ガラス並みのガスバリア性を持つ、世界で唯一のプラスチック製容器
用途 バイオ医薬品などの酸素に敏感な薬剤への適用
事業化予定 2020年(2017年よりサンプル出荷開始)
OXYCAPTTMの多層構造
酸素バリア性実験
酸素透過実験
水蒸気透過実験
  • Measurement device:MOCON PERMATRAN-W® 3/33
  • Condition:40℃ / In 100%RH, Out 5%RH

化学の知見を生かして
「工場野菜生産事業」に参入

植物工場は、畑地栽培やハウス栽培とは異なり、施設内で植物の生長に必要な光、温湿度、二酸化炭素濃度、水分、栄養分などの環境条件を制御しながら植物を栽培する施設です。三菱ガス化学はLEDを光源とする大規模の「完全人工光型植物工場」を建設し、天候に左右されることなく、最適な生育環境下で、安全・安心な葉物野菜を生産し、安定供給することを目指しています。工場野菜生産事業では、食品の安全・安心に関わるさまざまな化学の知見を植物の成長分析や品質管理に生かし、効率的な栽培環境を保つなど、持続可能な農業モデルの構築を図ります。

詳細

事業名称 工場野菜生産事業
工場の特徴 完全人工光型植物工場
生産品目 リーフレタス、ベビーリーフ等の葉菜類
生産量(計画) 日産2.6トン(1株80グラムのリーフレタス換算で3万2000株)
解決課題 年間を通じた安定供給、フードロスの削減
協業先
建設地 当社「QOLイノベーションセンター白河」内
生産開始予定 2019年
完全人工光型植物工場の特徴
  1. 土地面積当たり生産量が従来比100倍以上
  2. 天候や土壌等の自然環境の影響を受けない
  3. 栄養分等の投入資源の利用効率が高い
  4. 水の使用量が従来比約半分
  5. 無機肥料の使用量が少なく、環境汚染物質等の排水が少ない

リチウムイオン電池の大容量化を可能にする
「錯体水素化物固体電解質」の量産技術を開発

全固体電池は、全ての材料に固体を使用した電池です。従来のリチウムイオン電池のように液漏れや発火のリスクがないため、安全性が高く、大容量化や急速充電が可能な電池として、電気自動車等に向けた開発が進められています。
三菱ガス化学は、材料の一つである固体電解質の量産化技術を開発しました。従来の製法は固体をすり潰し混ぜ合わせて電解質を製造するため量産化が難しいという課題がありました。三菱ガス化学が開発した製法は、化学メーカーならではの有機溶媒を用いた液相合成法のため、量産化はもちろん、形成しやすい製法として注目されています。

詳細

開発技術 固体電解質の量産技術
用途 全固体リチウムイオン電池
特徴 大量生産が可能、製造が容易、設備導入のコストが小さい
解決課題 電気自動車の航続距離延長、充電時間の短縮、安全性向上
事業化目標 2020年代中ごろの採用を目指す

※錯体水素化物:リチウム、ナトリウムなどの金属イオンと、水素を含むアンモニア、ホウ素などの水素化物イオンが結合したもの。

全固体リチウムイオン電池とは?

リチウムイオンが正極と負極の間を行き来する通り道に、液体ではなく固体の電解質が使われている、全てが固体でできている電池

高速・大容量データ伝送が可能な
「アクティブ光ケーブル」の販売権を獲得

アクティブ光ケーブルは、銅配線における電気信号の伝送では困難な高速・大容量のデータ伝送が可能なケーブルです。さらに、両端の光電変換コネクタによって電気信号の伝送も可能なため、従来の銅線に置き換えてそのまま使用することができます。現在、データセンター用途や4K、8K テレビのディスプレイ用途での利用が広まりつつありますが、将来的には医療分野をはじめ、さらに市場が拡大していくことが期待されています。
三菱ガス化学は、アクティブ光ケーブルの開発販売を行うベンチャー企業に出資し、販売権を獲得しました。三菱ガス化学のポリマー技術、微細転写に代表される成形技術、積層基板製造技術等を応用することで、光信号伝送時のノイズ削減による性能の向上や、さらなるコスト削減が期待されます。

詳細

出資先
着眼点 Optomind社は、光学軸の調整を容易にする独自の設計技術と、既存の光ケーブルと比較して低コストかつ高い生産性でアクティブ光ケーブルを製造する技術を有している。
出資目的
  • 三菱ガス化学のポリマー技術、成形技術、積層基板製造技術とのシナジーが生かせる
  • 将来的に医療分野やモビリティ分野、バーチャルリアリティ分野などへも市場拡大が期待される
解決課題 高速・大容量のデータ伝送、光信号伝送時のノイズ削減